ナトリウム電池のパイオニア・ナトロンエナジー、14億ドルの工場建設を撤回

有力な新技術と目されていたナトリウムイオン電池のパイオニア、米ナトロン・エナジー社が操業停止を発表した。同社はノースカロライナ州ロッキーマウント地域に総額14億ドル規模の工場を建設し、1,000人以上の雇用を創出する計画を進めていたが、これを白紙に戻した。カリフォルニア州に本社を置く同社は、資金調達の失敗と売上確保の遅れにより財務的負担が限界に達し、ミシガン州およびカリフォルニア州の施設閉鎖に至ったと説明している。2024年には米国初となるナトリウムイオン電池専用ギガファクトリー計画を発表し、州政府や地域社会から大きな期待を集めていたが、市場の厳しい現実が計画を頓挫させた

この決定はノースカロライナ州における電気自動車および再生可能エネルギー分野の拡大にとって大きな後退となった。州当局は過去最大級の優遇措置を承認し、地域振興の柱と位置付けていたが、地元住民やサプライチェーンは雇用創出の機会を失った。ミシガン州でも同様の影響が生じている。業界アナリストは、本件を「技術的可能性と商業的実現性の乖離がもたらす教訓」と位置づけている。ナトリウムイオン電池はリチウム資源依存からの脱却に資する技術である一方、エネルギー密度や市場導入の課題を克服できなかったことが露呈した。

ナトロン社の倒産は、新興エネルギー技術のスケールアップにおける資金調達力と市場参入時期の重要性を改めて示した。特に最近のリチウム価格の急落の影響は、多くの新興バッテリー技術のスタートアップ企業の事業に影響を与えている。エネルギー転換の推進には革新性のみならず、経済的現実と調和した持続可能な事業基盤や、業界リーダー・政府関係者の協調した支援が不可欠である。

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